あなたは縄文人?渡来人?:都道府県別の遺伝的解析

  もうすぐ2月11日の建国記念日がやってきます。日本を建国した日本人は単一民族である、と思っている人もいますが、現在の日本人(アイヌ人、琉球人、本土人)は、縄文人の系統と、中国大陸や朝鮮半島由来の渡来人(弥生時代以降に複数回渡来)の系統が混血した集団の子孫であると考えられています。つまり遺伝子からみても単一民族ではありません。

  以前のコラムでもご紹介しましたが、日本人男性のY染色体(男性のみ保有)の全塩基配列決定と変異解析からは、韓国人・中国人を含む他の東アジア人集団にはほとんど観察されない遺伝子を、およそ35%の日本人男子が持っていることが分かっています。この遺伝子は縄文人に由来すると思われ、アイヌ>沖縄>東日本>西日本の順に少なくなります。従来から言われているように、大陸からの渡来人により、縄文人の居住地域が変化した様子が、現代日本人男性のY染色体からも想像できます。

  最近、東京大学大学院理学系研究科の研究グル-プは、47都道府県に居住する日本人約11,000名の全ゲノムSNP(DNA塩基配列の1つの塩基の違いによる多型)遺伝子型データを用いて、都道府県別に日本人の遺伝的集団構造を調べました。その結果、現代日本人の遺伝的構造は、各都道府県における縄文人と渡来人の混血の程度と地理的位置関係によって特徴づけられることが示されました。このように都道府県レベルで日本人の遺伝的集団構造が明らかになったのは初めてです。

  分析の結果、47都道府県は沖縄県とそれ以外の都道府県に分かれ、沖縄県以外は「九州・中国地方」、「東北・北海道地方」、「近畿・四国地方」の3つのクラスターに大別されました。残念ながら関東地方や中部地方は、1つのクラスター内にまとめることは出来なかったそうです。つまり、関東地方および中部地方は、ばらつきが大きく(各地との混血度が高い)、各都県が遺伝的に近縁な集団とみなすことはできないそうです。

  47都道府県の分析から、沖縄県に遺伝的に最も近いのは鹿児島県でした。地方別に着目すると、北海道・東北地方や九州・中国地方が沖縄県に遺伝的に近く、近畿・四国地方は遺伝的に最も遠いことが分かりました(図参照)。さらに別の解析からは、近畿・四国地方は中国・北京の漢民族に遺伝的に近いこともわかりました。関東地方や中部地方は、ばらつきが大きいのですが、おおむね中間に位置することが示されました(図参照)。詳細は省略しますが、各都道府県民の遺伝子結果を見ると、過去の近縁地域での移動、交流や、思いもかけない遠方同士の交流が垣間見え興味深いです。

  以上の結果は、各都道府県の縄文人と大陸から来た渡来人との混血の程度の違いと地理的位置関係が、本土人の遺伝的地域差を形成した主な要因であることを示唆しています。多くの渡来人は、大陸・朝鮮半島経由で日本列島に到達したと考えられますが、朝鮮半島から地理的に近い九州北部ではなく、近畿地方や四国地方の人々に渡来人の遺伝的要素がより多く残っていることは、日本列島における縄文人と渡来人の混血過程を考えるうえで興味深いと思われます。例えば、渡来人は船で瀬戸内海を通り、近畿地方や四国に直接来たのかも知れません。なお、本土人の遺伝子の80%程度は渡来人由来であると推定されています。

  私ですか?周りからは縄文人的というより、原始人的といわれています。親不知が4本も生えた32本の歯列、鋭い嗅覚と低い鼻、骨太でずんぐりしたネアンデルタール人的な体型からです。(by Mashi)

・けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ(小林一茶)

(異国から渡来した雁よ、今日からは日本の雁なのだから気楽にやすんで下さい)

参考文献:Yusuke Watanabe, et al., Prefecture-level population structure of the Japanese based on SNP genotypes of 11,069 individuals. Journal of Human Genetics (2020), DOI:10.1038/s10038-020-00847-0

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