最近、こんな見出しがアメリカのメデイアで大きく取り上げられたそうです。といっても何のことかよく分かりませんよね。ハ-バ-ドチャンとは、米国ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のことで、疫学などの公衆衛生学の最高峰です。サ-ビングとは、直感的に分かるように、「一食分として食べる量」の意味です。野菜類は一皿分、約70gに相当します。果物では一つ分、約100gに相当します。つまり表題は、公衆衛生学の権威が、長寿のために毎日野菜と果物を計5サ-ビング食べると良いという結論を出したということです。
野菜や果物が健康に良い、発がん率を低下させる、というのは従来より日本ではよく言われてきましたが、今回は世界の210万人のデ-タからも裏付けられたということになります。デ-タは、米国の男性と女性計10万人の2つの前向きコホート研究と、世界中の26のコホート研究のメタ分析の結果です。コホート研究は、特定の要因に関係した集団と関係していない集団を一定期間追跡し、要因と疾病発生の関連を調べる疫学研究です。将来に向けて追跡した場合(前向き)、疾病発生までの時間経過を観察することができます。メタ分析とは、複数の研究結果を統合し、より高い見地から分析する信頼性の高い手法です。
ハ-バ-ド大学で行われたコホ-ト研究の追跡期間は、1984~2014年の30年間であり、研究開始時に心血管疾患、がん、または糖尿病がある対象者は含まれていません。解析の結果、全死亡率が最も低かったのは、1日に野菜と果物を計5サービング摂取の場合であり、摂取量がそれ以上増えても全死亡率がさらに低下することはありませんでした。また、5サービングの最適な配分は、野菜3サービング(小皿三皿分)、果物2サービング(二つぶん)であることも判明しました。
1日の果物と野菜の摂取量が5サービングの人では、2サービングの人と比べて、全死亡リスクが13%、心血管疾患や脳卒中による死亡リスクが12%、がんによる死亡リスクが10%、慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患による死亡リスクが35%、それぞれ低いことが分かりました。
このような疾病リスク軽減に寄与する野菜や果物は、何でも良いわけではないようです。野菜であれば、ほうれん草やレタス、ケールといった葉野菜、果物であれば柑橘類やベリー類などのビタミン類が豊富なものの摂取が良い結果をもたらすようです。一方、ジャガイモやトウモロコシ、豆類などのでんぷん質の野菜、そしてフルーツジュースなどは、全死亡や特定の慢性疾患のリスク低下を示さないことが分かりました。コホ-ト研究対象210万人のうち18万人が亡くなり、貴重なデ-タを遺してくれたことになります。(by Mashi)
・庵の夜は餅一枚の明かり哉(小林一茶)
貧乏暮らしには、餅が一枚あるだけで夜は明るくなる。栄養学の知識が無かった時代、体を動かすためにカロリ-源が何よりも大切だったのでしょう。
参考文献:Wang DD, et al., Fruit and Vegetable Intake and Mortality: Results From 2 Prospective Cohort Studies of US Men and Women and a Meta-Analysis of 26 Cohort Studies. Circulation. (2021) ; 143(17) : 1642-1654. DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.048996
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