コロナ禍で思う天才の偉業

 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)は世界中で猛威をふるい、2020年9月末では感染者数3,300万人、死者数100万人という100年ぶりの歴史的パンデミック状態になっています。都市封鎖や自宅待機など、多くの人が従来と違う生活様式を強いられています。このような社会活動制限は、病原体の実体が分からなかった昔から実は行われていたようです。

 ペストは有史以来度々流行し、中世ヨ-ロッパでは人口の三分の一が失われたともいわれています。17世紀のロンドンでもペストが大流行しており、この影響でケンブリッジ大学も閉鎖されたそうです。そのためニュートンは、ロンドンから故郷のウールスソープへと戻り、大学ですでに得ていた着想について、自由に一人でじっくりと思考する時間を得ることが出来ました。

 こうしてニュートンは故郷での休暇中に、微分積分学や、光学、万有引力の着想などに没頭することができました。これらの「ニュートンの三大業績」とされるものは、いずれもペスト禍を逃れて故郷の田舎に戻っていた18か月間の休暇中になしとげられました。

 万有引力の法則に関して、「庭にあるリンゴの木からリンゴが落ちるのを見て万有引力を思いついた」とされていますが、真偽は定かではありません。しかし、ニュートンが死去した年に、ヴォルテールはエッセイ(1727)の中で、ニュートンの姪に聞いた話として「ニュートンは庭仕事をしている際に、リンゴの木からリンゴが落ちるのを見て、重力に関する最初の発想を得た」とする逸話を紹介しています。

 そのりんごの木は、ニュートンの出生地であるイギリスのウールソープ村にありましたが、その後ミドルセックス国立物理研究所に移植され、接木法によって代を重ね今日に至っています。そして日本にもその苗木が届き(1964年)、東京大学附属小石川植物園の記念樹としてすっかりお馴染みになっています。この小石川植物園のニュートンのリンゴの木は、その後科学の振興啓発のために、日本各地の学校や科学にかかわる施設に穂木で分譲され、今では日本の各地で育っています。

 通常の社会生活が出来ない閉鎖的な状況は、通常多くの人に苦痛をもたらしますが、統合失調症の人にはむしろ快適さをもたらすそうです。統合失調症とされるニュ-トンも、農場の納屋にこもり大発見をしました。ペスト禍の後、大学に戻ってからは大発見もありませんでした。後年、錬金術に邁進した狂気はあまり知られていないようです。(by Mashi)

参考文献:山田和夫、天才の精神分析、医学のあゆみ、274、1227-1228(2020)

0コメント

  • 1000 / 1000