新型コロナに対するゼラニウムとレモン精油の期待

    以前のコラムでも述べましたが、新型コロナウイルスの感染は、細胞表面にあるACE2(アンギオテンシン変換酵素2)にウイルスの外側にあるスパイク蛋白質が結合することから始まります。すなわち細胞のACE2(アンギオテンシン変換酵素2)が、ウイルスの受容体になっています。ACE2は、鼻上皮、口腔粘膜、舌上皮、気管支、肺、心臓、腎臓、消化器等(小腸、大腸)に発現していることから、体の広範囲の場所が感染の侵入口になりうることになります。年少者の感染率は低いことが知られていますが、実際鼻粘膜上皮のACE2発現は、年少小児群で最も低く、年齢と共に増加しています。

    最近、ある種の精油が、ウイルスの受容体になるACE2の発現を減少させることが報告されています。その研究では、10種類のエッセンシャルオイルのACE2発現低下作用を、上皮細胞を用いて調べました。10種類の中で、ゼラニウム精油とレモン精油は上皮細胞でACE2発現低下作用を示しました。さらに、イムノブロッティング法でACE2蛋白質量とPCR分析によりRNA量をしらべたところ、共に減少していました。このようにゼラニウム精油とレモン精油がACE2発現に対する強い阻害効果を持っていることが確認されました。

    ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)分析では、ゼラニウム精油に22種の化合物、レモン精油に9種の化合物が検出されました。シトロネロール、ゲラニオール、酢酸ネリルはゼラニウム精油の主要な化合物であり、レモン精油の主要な化合物はリモネンでした。次に、主な成分であるシトロネロールとリモネンを用いてACE2発現を調べたところ、精油と同様、上皮細胞におけるACE2発現を有意に低下させることが分かりました。

    ゼラニウム精油は、いわゆる園芸植物としてよく見かけるゼラニウムではなく、ロ-ズゼラニウム(フウロソウ科)(図参照)から得られる精油であり、主成分はシトロネロ-ル(約30%)、ゲラニオ-ル(約20%)で,鎮静、鎮痛、抗うつ、自律神経調整などに用いられています。レモン精油は果皮から抽出され、リモネンが約70%を占め、消化不良、むくみ、精神鼓舞などに使われています。

    このように、精油によっては新型コロナウイルスの受容体を減少させ、感染初期に効果を示す可能性があります。受容体減少の特異性や、ヒトでの効果は今後の課題ですが、大げさに言えば天然の抗ウイルス剤といえるかも知れません。感染初期で効果が期待されることから、うがい液や鼻洗浄液にゼラニウムやレモンの精油を加えると良いかもしれません。(by Mashi)

参考文献:K J Senthil Kumar et al., Geranium and Lemon Essential Oils and Their Active Compounds Downregulate Angiotensin-Converting Enzyme 2 (ACE2), a SARS-CoV-2 Spike Receptor-Binding Domain, in Epithelial Cells. Plants (2020) doi: 10.3390/plants9060770.

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