ストレスで白髪は本当だった!

  加齢による白髪とは別に、強いストレスと白髪は関係が深いと考えられています。大統領などの国家元首は、就任した後、急速に白髪になる場合があることも知られています。フランス革命で処刑された王妃アントワネットは、処刑前夜に一晩にして白髪になったと言われています(そんなことはあり得ませんが、幽閉されている間にストレスで急速に白髪化したかも知れません)。こんな言い伝えがあるように、髪の急速な白髪化は、マリー・アントワネット症候群と広く呼ばれています。最近、米ハーバード大の研究チームは、ストレスが白髪をつくるメカニズムを解明し、英科学誌ネイチャーに論文が掲載されました。

  毛根付近にある幹細胞(あらゆる細胞(発毛にかかわるものも含む)に分化する能力のある万能細胞)は、通常、髪が生える過程で徐々に色素細胞に変化し、髪の色素を生成しています。ところが、ストレスによりと交感神経から神経伝達物質ノルアドレナリンが放出されると、幹細胞は過度に活性化され、急速に色素細胞へと変わるため枯渇してしまいます。そのため髪に色素が伝わらず白髪となります。

  研究者達は、黒毛のマウスを用いて、髪の成長のさまざまな段階で3つの異なるストレス(痛み、抑制、心理的ストレス)にさらしました。そうすると、ストレスにさらされてから数日以内に色素幹細胞が減少し、急激な白毛化が起こりました。さらに研究者達は、ストレスが交感神経系を活性化し、神経伝達物質ノルアドレナリンの放出を誘導することも見いだしました。ノルアドレナリンは、色素幹細胞を増殖させ、色素細胞に変化させます。しかし最終的には色素幹細胞が枯渇するため、色素細胞が産生されなくなり、毛髪への色素沈着が行われず白髪化します。逆に、色素幹細胞の増殖を阻害すると、色素幹細胞の喪失と白毛化が防げることも明らかになりました。またストレスによる白髪化は、免疫攻撃や古典的なストレス関連ホルモンとは無関係でした。

  ストレスによって引き起こされる灰色化、白髪化は進化上のどのような利点が何かあるのでしょうか。白髪は、多くの場合年齢に関連しているため、経験、リーダーシップ、信頼感に関連している可能性があります 。 たとえば、成熟したオスのシルバーバックマウンテンゴリラは、完全に成熟した後に背中に白髪があらわれ、ゴリラの群体を率いることができます。 おそらく、白髪を獲得した動物は、十分なストレスに耐えたあかしであり、より上位の位置に立つことが出来たのかも知れません。私も白髪なのですが・・・・・(by Mashi)

参考文献:1) Bing Zhang et al., Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature volume 577, pages676–681(2020) doi: 10.1038/s41586-020-1935-3 2) Shayla A. Clark & Christopher D. Deppmann How the stress of fight or flight turns hair white. Nature 577, 623-624 (2020) doi: 10.1038/d41586-019-03949-8

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