AIは顔をみて冠動脈疾患を検出できる!?

  人の顔にはその人のすべてが表れると言われたりします。たとえば、顔色の良し悪しを、健康かどうかの目安としてとらえることがあります。人により顔には独特の色とつやがあり、表情もあり、それらを総合して顔色といったりします。したがって、なんとなく元気がなく皮膚のつやや張りがないとき、また血色がわるく、白っぽく見えたりくすんで見えたりすると、顔色が悪いといいます。このような場合には、顔の皮膚の血管が収縮し、皮膚の表面から血の気が失せ、顔色が蒼白となっていたりします。

  最近、欧州心臓病学会は、人の顔写真データを人工知能(AI)で深層学習し、冠動脈疾患を判別するアルゴリズムが開発されたと発表しました。これは、中国国営循環器病センターの研究グループによる報告です。ちなみに最近の世界における学術論文数は、中国、米国、インド、ドイツ、日本(5位)の順です。医学系の学術論文数は、米国、中国、英国、日本(4位)、ドイツの順です。学術においても、経済においても、停滞する日本を抜き去り、中国は20年前と比べ驚異的な躍進です。

  冠動脈疾患は、世界的に死因の上位であり、安価で効率的なスクリーニングの開発が望まれています。実は、心臓病リスクと、顔に現れる特徴にある程度関連があることは知られています。その特徴とは、薄毛や白髪、しわ、耳たぶのしわ、黄色腫、角膜輪などが含まれているそうです。しかし、これらを心臓病リスクの予測や定量化に利用するのは従来困難でした。そこで研究グループは、顔の特徴から冠動脈疾患の可能性の有無を調べる、深層学習アルゴリズム開発を目指し、研究を行いました。

  患者は、冠動脈造影や冠動脈CT造影検査を受け、無作為に学習用のグループ(学習群、5,216人)と検証用のグループ(検証群、580人)に分けられました。看護師が学習群の患者1人あたり4つの角度(正面、両横顔、頭頂部)から顔写真を撮影し、患者の社会経済的状態、ライフスタイル、既往歴に関する聞き取りも行いました。さらに放射線科医が患者の検査データを確認し、50%以上狭窄した血管の数とその位置に応じて、心臓病の程度を評価しました。この情報を基に、深層学習アルゴリズムの作成、学習、および検証を行いました。

  開発されたアルゴリズムについて、中国の9つの病院から登録された1,013人の患者に対し検証を実施した結果、今回開発されたアルゴリズムは、既存の方法よりも、心疾患リスク予測において優れていることが明らかになりました。テストグループにおけるアルゴリズムの感度は80%、特異度は54%だったそうです。

  このように、一般集団における心臓疾患の有無を特定するツールとして有用な可能性が示唆されました。将来的には、受診前に心臓病のリスクを評価できる、自己申告アプリが開発されたり、スマホなどで自撮りした写真データから、詳細な検査が必要か否か、あらかじめ特定できる時代が来るかも知れません。 (by Mashi)

参考文献:Shen Lin et al., Feasibility of using deep learning to detect coronary artery disease based on facial photo. European Heart Journal, (2020), https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehaa640

0コメント

  • 1000 / 1000