コモドドラゴンには皮膚の下に鎧のような皮骨がある

  インドネシアのコモド島と周辺の島々に生息するコモドドラゴン(コモドオオトカゲ)は、全長200-300cm、体重約70kgにもなる頑強な大型の爬虫類です(図参照、ウィキペディアより)。四肢は発達し素早く動くことができ、鋭い爪も生え、主にイノシシやシカ、スイギュウ、ヤギなどの大型哺乳類を食べていますが、コウモリ、サルなどの哺乳類、鳥類やその卵、ウミガメなどの爬虫類、さらに動物の死骸なども食べるそうです。嗅覚は発達し、4キロメートル先にある動物の死骸の匂いも察知することもできるといわれています。

  最近、コモドドラゴンには、頭から尾にかけて、鱗に覆われた皮膚の下に、小さな骨からできた鎧のような「皮骨」が多数存在することが、米国テキサス大学などの研究で明らかになりました(図参照、論文より)。皮骨とは、動物の表皮あるいは真皮中に軟骨の基礎がなく発生した骨性のもので、魚類の鱗やカメの甲羅、ワニなどの骨性板などの例があります。

  米国テキサス大学とフォートワース動物園との共同研究チームは、19歳半で死亡した長さ約3メートルのコモドドラゴンの成体と、生後2日で死亡したコモドドラゴンの幼体を、テキサス大学の高分解能X線CT装置で調べ、それぞれの骨格をデジタル化しました。その結果、コモドドラゴンの成体には鎧のような「皮骨」が発達していましたが、幼体には「皮骨」がないことを発見しました。

  研究者は、コモドドラゴンの幼体は多くの時間を樹上で過ごし、成体になるにつれて他のコモドドラゴンと争い始めるため、身を守るためにその頃「皮骨」の鎧ができはじめ、身を守るために役立つのだろうと推察しています。また、調べられた成体のコモドドラゴンは、これまで確認されているもののなかで最も長寿のコモドドラゴンであったことから、研究者は「老化と共に死に至るまで、コモドドラゴンの皮骨が成長し続けるのではないか」と考えています。

  研究チームは、トゲオオトカゲなど、7種類のトカゲの頭部とコモドドラゴンを比較しました。その結果、これら7種類のトカゲの「皮骨」の形状は1種類もしくは2種類でしたが、コモドドラゴンの「皮骨」は4種類の形状があり、頭部もほぼ完全に「皮骨」で包み込まれていました。コモドドラゴンの成体にある「皮骨」は、形状が多様で、体全体を覆っている特徴があるようです。

  その昔、平清盛が鎧姿を隠すため、衣を上から身につけたことから、「衣の下の鎧」という言葉(体よくとり繕ったうわべの下からのぞいている本音や本心)がありますが、コモドドラゴンは正真正銘の「衣の下の鎧」を持っているようです。(by Mashi)

参考文献:1) Jessica A. Maisano et al., The Cephalic Osteoderms of Varanus komodoensis as Revealed by High‐Resolution X‐Ray Computed Tomography. Anat Rec. (2019) 302:1675–1680, https://doi.org/10.1002/ar.24197 2) 松岡由希子、ニュ-ズウイ-ク日本版(2019年9月18日)

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