睡眠喪失による死の原因は腸にあり:脳腸相関①

  誰でも感じていることですが、十分な睡眠をとらないと、倦怠感や全身疲労、集中力の欠如などが起こります。さらに長い睡眠不足の影響はより深刻で、見当識障害、妄想、幻覚などを起こしたり、心臓病、2型糖尿病、癌、肥満、うつ病、その他多くの病状に関連していることが知られています。すなわち、不十分な睡眠は深刻な健康問題と関連しています。また動物(イヌ、ラット、ゴキブリ、ハエなど)でも、睡眠制限は早期死亡につながることが指摘されています。

  さまざまなコホ-ト研究(疫学調査)やそれらのメタ解析により、7時間前後の睡眠時間のヒトに比べ、それ以下(特に4時間未満)やそれ以上(特に10時間以上)のヒトでは、疾病の罹患率や認知症の程度が高いことが知られています。さらに死亡率も睡眠4時間未満や10時間以上のヒトで高いことが報告されています。では一体何故適度の睡眠が必要なのでしょうか?

  最近、ハーバード大学医学部の神経科学者達は、睡眠不足と早死の予期しない因果関係を明らかにしました。ハエを用いた彼らの研究から、睡眠不足で死に至る前には常に腸内に活性酸素種の蓄積が先行していることが分かりました。逆にハエに抗酸化化合物を投与して腸から活性酸素種を中和および除去すると、睡眠不足の動物も活動的なままで、通常の寿命を示しました。マウスでも確認したところ、十分な睡眠が得られない場合、やはり活性酸素種が腸に蓄積することが確認されました。

  研究者達は、通常約40日の寿命を持つミバエに、強制的に10日間の睡眠不足を課すと、ミバエの死亡率が急上昇し、すべてのハエが約20日で死亡したことを発見しました。死亡率は約10日目に増加したため、研究者たちはその前後で細胞損傷のマーカーを探しました。

  その結果、脳を含むほとんどの組織は、睡眠不足のハエと通常のハエの間で差がありませんでしたが、例外が1つあることが見つかりました。睡眠を奪われたハエの内臓には、活性酸素種の劇的な蓄積があったのです。これらの反応性の高い酸素含有分子は、細胞内のDNAをはじめとする代謝物質に損傷を与え、細胞死を引き起こす可能性があります。ハエの腸における活性酸素種の蓄積は、睡眠不足の10日目頃にピークに達し、睡眠不足が改善されると、活性酸素種レベルは減少しました。

  研究者達も、「睡眠喪失で死を引き起こすのに重要な役割を果たすのは、腸であることに私たちは驚いた」と述べています。以前より脳腸相関といわれるように、実は腸と脳は密接な関係がある典型的な例かも知れません。(by Mashi)

参考文献:Alexandra Vaccaro et al., Sleep Loss Can Cause Death through Accumulation of Reactive Oxygen Species in the Gut. Cell (2020) 181(6):1307-1328.e15. doi: 10.1016/j.cell.2020.04.049.

0コメント

  • 1000 / 1000