パーキンソン病では運動障害が起き、たとえば「手足が震える」「筋肉がこわばる」「動きが緩慢になる」「姿勢を保てなくなる」などの症状が見られます。最近では、運動障害に先行して嗅覚障害が起きることも知られています。運動障害は、大脳の下方にある中脳で神経伝達物質の一つであるドーパミンが減少するためですが、それだけではなく、α-シヌクレインという異常タンパク質が集積し、レビ-小体と呼ばれる構造物が形成されています(図参照)。これが原因となって神経細胞が変質し、ドーパミンが減少すると考えられています。
パーキンソン病の患者さんでは、そうでない人に比べ4~6倍の頻度で認知症をきたしやすく、パーキンソン病の約3割、発症から10年以上経過すると約7割に認知症がみられます。パーキンソン病発症から1年以上経過後に認知症を発症した場合は、認知症を伴うパーキンソン病、運動障害以前に認知症を発症していた場合は、レビー小体型認知症と呼んでいます。
ではレビ-小体を形成するα-シヌクレインというタンパク質は、一体どこで作られているのでしょうか? 脳内でしょうか? 実は驚くべきことに最近腸が鍵であることが分かってきました。名古屋大などの研究チームが明らかにしたところによると、腸内の状態によって、病気の原因物質α-シヌクレインが神経に蓄積しやすくなるそうです。研究者達は、日本人患者223人と、公開されている米国、フィンランド、ロシア、ドイツの患者情報を基に腸内細菌を分析しました。その結果、パ-キンソン病患者では、腸の粘膜の保護物質を分解するムチン分解菌が増え、免疫に関わるとされる短鎖脂肪酸を作る短鎖脂肪酸産生菌が減っていることが分かりました。
パーキンソン病患者の腸管にある神経叢(神経の集まり)には、異常タンパク質であるα-シヌクレインがほぼ100%存在しています。すなわち、腸で発生したこの異常タンパク質が迷走神経を介して脳へと徐々に移動していき、中脳に到達することで神経細胞をこわし、パーキンソン病を発症させる可能性があります。迷走神経は、腸管の運動などを支配する脳神経の一つで、腸から脳に到達しています。実際、手術で迷走神経を切除するとパーキンソン病を発症しにくくなったり、潰瘍性大腸炎患者さんはパーキンソン病になりやすいことや虫垂を切除するとパーキンソン病になりにくくなることなども知られています。
パーキンソン病患者さんでは、ムチン分解菌の増加により腸管のムチン層(粘液バリア)が分解され、腸管透過性が亢進し、パーキンソン病の原因物質であるα-シヌクレインの腸管神経叢への蓄積が促進されると思われます。また短鎖脂肪酸産生菌の減少により、中枢神経系の炎症が抑制できなくなることが予想されています。脳と腸は、やはり思いの外密接に関係している(脳腸相関)ようです。(by Mashi)
参考文献:Hiroshi Nishiwaki, et al., Meta-Analysis of Gut Dysbiosis in Parkinson’s Disease. Movement Disorderse(2020) DOI: 10.1002/mds.28119, https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/mds.28119
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