新型コロナ感染症のリスクは血液型で違う!!

    新型コロナウイルス感染症(疾患名COVID-19、ウイルス名SARS-CoV-2)は、いったん治まりつつありましたが、今後の流行はどうなるか予断を許しません。欧米と比べて、日本の死者数は相対的に低く抑えられており、社会的要因(医療体制、BCG接種、清潔志向、日本語の特性)や生物学的要因(体質、免疫、過去の感染)が想定されていますが、未解明の問題です。

    さて最近、COVID-19と血液型の関連についていくつかの研究が報告されていますが、いずれも結論は類似しており、「A型の人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかりやすく、重症化しやすい一方、O型の人はリスクが低い」というというものです。

    信頼性の高いNew England Journal of Medicine誌に掲載された論文では、イタリアおよびスペインのCOVID-19患者のうち、重症化した1980名と、重症化しなかった2381名を対象として、血液型(ABO型)を含む、重症化に関連する遺伝的背景を調べました。その結果、血液型A型の人では、A型ではない人に比べて、重症化した人は45%多い(オッズ比1.45)ことが示されています。一方、O型の人では、O型ではない人に比べて重症化した人が35%少ない(オッズ比0.65)という結果でした(図参照)。

    感染が初発した中国でも、2020年1月から3月にかけて、COVID-19入院患者(187名)と、COVID-19ではない入院患者(1991名)を対照として、血液型の分布を調べています。その結果、A型の割合はCOVID-19患者で36.9%、COVID-19ではない対照患者では27.5%であり、A型のCOVID-19患者は統計的に有意に高いことが示されました。一方、O型の割合はCOVID-19患者では21.9%、対照患者では30.2%と、O型のCOVID-19感染リスクは相対的に低いという結果でした。

    感染者数の多いアメリカからの報告でも、SARS-CoV-2ウイルス陽性者の中で、A型の人はA型ではない人に比べ1.3倍多く(オッズ比1.338)、一方、O型の人では、そうでない人に比べて陽性者が20%少ないという結果でした(オッズ比0.804)。この結果は、さまざまな疾病(高血圧、糖尿病、心血管疾患、肺疾患など)や年齢、性別とは直接関係がない(独立要因)そうです。ちなみに、O型の人は2003年のSARS-CoV-1流行時においても、感染リスクが低かったと報告されています。

    血液型の違いは細胞表面の糖鎖の違いであるため、様々な受容体の差異を引き起こし、結果として細胞機能、生体反応にまで影響がおよぶ可能性があると思われます。最近報告されている、血液型と感染症の発症リスクについても図に記載しました。(by Mashi)

参考文献:1) David Ellinghaus, et al., Genomewide Association Study of Severe Covid-19 with Respiratory Failure. N Engl J Med (2020) doi: 10.1056/NEJMoa2020283. 2) Yuqin Wu, et al., Relationship between ABO blood group distribution and clinical characteristics in patients With COVID-19. Clin Chim Acta.(2020) 509:220-3. 3) Michael Zietz et al., Testing the association between blood type and COVID-19 infection, intubation, and death. medRxiv. (2020) Apr 11;2020.04.08.20058073. PMID:32511586 4) D Rose Ewald and Susan C J Sumner, Blood type biochemistry and human disease. Wiley Interdiscip Rev Syst Biol Med. (2016) Nov;8(6):517-535. doi: 10.1002/wsbm.1355.

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